留学先各校の新型コロナウイルスに対する取り組み(2020年6月)
5月半ばに留学先の国々や学校の新型コロナウィルスへの対応状況をブログにてお伝えしました。
留学先各国の新型コロナウイルス対策と学校の対応状況
今回はその続報として、2020年6月現在の留学先各校の新型コロナウイルスに対する取り組みをお伝えします。
注意事項: 情報は記事公開時点のものです。各国の新型コロナウイルスの感染状況の変化などによって、国や地域、学校の対応が変更される可能性がありますので、ご注意ください。
留学先各国の現状
アメリカ合衆国は、現在も新型コロナウイルスの感染者数が高い水準で推移しています。国境を接するカナダでは、新規感染者数は減少し続けていますが、アメリカの状況が落ち着くまでは厳重な警戒が続けられるものと思われます。
一方、スイス、オーストリア、ニュージーランドは、新規感染者数は日本と同等かそれ以下にまで減少していますが、現在も感染防止のための対策は継続中です。
ボーディングスクール各校の対応
8月末~9月初旬に新学期を迎える北半球のボーディングスクールでは、学生や学校関係者の安全と健康を最優先とし、学校再開に向けさまざまな対策を講じています。
アメリカ、カナダ、イギリスではリモート授業体制のまま、今学年度が終了する見込みです。状況が落ち着いてきているスイスでは、一部学校が再開し、対面授業を行っています。
南半球のニュージーランドは、6月に入り、すべての学校が再開されました。
アメリカのボーディングスクール
アメリカ東海岸のボーディングスクールでは、海外から到着する留学生や国内他州から到着するアメリカ人学生に対し、2週間の隔離措置を要請します。クラス開始2週間前にキャンパスに到着後、決められた場所に滞在し健康状態をチェック。
キャンパス内ではソーシャルディスタンスを図るため、普段使用していない建物を教室、寮または食堂として使用するため、施設の再配置も進められています。
人々の往来が感染リスクを高めるため、学校によっては年間スケジュールを大幅に変更。例えば、11月の感謝祭休暇期間(約10日間)も授業を継続し、代わりに12~1月の冬休みを延長します。キャンパス外からウイルスを持ち込まないよう、休暇の頻度を減らすという工夫です。学生のリーダー達が教職員とミーティングし、新しい学校の体制づくりに積極的に参加している学校もあります。
冬休みや春休みという長期休暇に国に帰らない学生のためには、寮の一部を宿泊施設として提供。更に新学期にアメリカに入国できない留学生にはオンライン授業を行うなど、様々な対応を予定しています。
カナダのボーディングスクール
海外から入国する留学生、またカナダ国内でも他州から入学する学生に対しては、カナダ政府が14日間の予防隔離措置を課しています。また国土が広大なカナダには10の州があり、各州の教育省が州内の学校を統括。9月の新年度再開に向けて、様々な計画が進められています。
東部ノバスコシア州のKing’s-Edgehill Schoolは同州公衆衛生局によって承認されているコンファレンスセンターを借り、到着する学生達の受入れを実施。学生はそこで2週間を過ごした後、学校のバスでキャンパスへ移動。またクリスマスや3月の休暇時にカナダに残る寮生は滞在できます。
カナダ中央に位置するマニトバ州ウィニペグにあるBalmoral Hall Schoolは、地元のホテルと提携し、留学生、および州外から到着する学生のための隔離期間を設けました。ホテルには学校のスタッフが常駐します。
また西海岸ブリティッシュコロンビア州のBodwell High Schoolでは、予防隔離措置を学内寮にて行います。そのため、留学生の到着日を分散させる計画で、現在、希望日の予備調査を行っているところです。
スイスのボーディングスクール
6月20日時点で、スイスは観光ビザでの入国を認めていませんが、留学生を含め居住許可証所持者は、スイス人と同様に入国可能です。
ローザンヌにあるインターナショナルスクールCollege Champittetでは、 5月11日から留学生を含む寮生が帰寮し、学校を再開しました。5週間が経過した6月半ばの時点でウイルス感染に関する問題は発生しておらず、学校が策定した衛生、および健康管理策が奏功していると言えそうです。
オーストリアのボーディングスクール
6月14日にオーストリア保健省が少人数(20人以下)を受け入れるサマープログラムの開催を許可したことを受け、ザルツブルグにあるAmerican International Schoolでは、7月19日開始の第一セッションの準備が着々と進んでいます。
ソーシャルディスタンスを設けることやマスクの着用は義務付けられていません。また週末のアクティビティも行われる予定です。9月からの新年度も例年通り再開すべく教職員のトレーニング等が進められています。
ニュージーランドのボーディングスクール
ニュージーランドでは、3月末から7週間に及んだロックダウンが奏功し、5月13日に警戒レベル2へ移行し、同18日からほぼ全ての学校が再開しましたが、各校では次のような感染防止の取り組みを継続しています。
- 各教室に消毒液を置き、授業前後に必ず手指の消毒を行う
- 食事の前は必ず手を洗う
- ソーシャルディスタンス(1メートル)を確保する
- 学校内の通路を一方通行とし、人が擦れ違わないようにする
6月11日にレベル1へ移行し、学校生活は完全にロックダウン前の状態に戻っていますが、現地で学んでいる学生の皆さんからは、次のような声が聞かれます。
- 「レベル1へ戻りましたが、それでも学校の食堂では手洗いなどまだかなり警戒しています。料理を自分で盛り付けることはできません」
- 「引き続き、消毒液をよく使っています」
- 「タウンのお店に行くと入口で必ず名前と連絡先を書くことになっています」
- 「国境がいつ開くのか、学年末には帰国できるのか不安です」
ニュージーランドは6月半ば時点で、新規感染者はほぼいない状況ですが、国境は引き続き閉鎖されており、いつ開放されるかについては全く判らない状況が続いています。
世界各国で教育を重視した取り組みが続いています
日本の学校では、分散登校など様々な感染予防対策を導入し、教育が再開しました。ひと頃に比べ新規感染者の数も低い水準に留まっていますが、世界的にはまだ予断を許さない状況です。
感染予防と経済活動の両立を目指すのと同様、各国の学校が教育を止めない取り組みを行っています。先行き不透明な中、与えられた条件のなかで最善の方策を模索し続けることが大切なのだと思います。
ボーディングスクールは世界各国の若者が寝食を共にし、将来グローバル社会を担い貢献する人材育成の場です。教育理念の根幹に「他人への尊敬の念をもつ」「柔軟に考え対応する」「積極的にリスクを取りチャレンジする」という価値を置きます。不測の事態が起こった今こそ、この価値が実践される機会となり、教育を止めないための新しい学校生活が始動しています。